「ん?、まだ寝てなかったのか」

呂蒙が仕事を終え、自分の部屋に戻ってくるとが入口に佇んでいた。どうやらずっと呂蒙を待っていたらしい。

「ううん、眠れないんじゃなくて、今日は眠りたくないんです。だって…」

伏目がちにが言った。

「?」

「今夜はね、ずっと呂蒙さんのお部屋にいたいなぁと思って。…あのね、実は私、いろいろ準備してきたんです」

「なッ、なな何をだ」

「え?…ふふ、秘密」

ちら、と呂蒙を見る。その視線が、呂蒙には妙にいじらしく見えた。


「んなぁぁッ!!?」


「ねぇ…呂蒙さん、私ね…」

「…ま、待て、。ちょ、ちょっと待ってろ」

よろよろと自分の部屋から遠ざかり、廊下の壁にへばりつくようにしながら片手で鼻を押さえる呂蒙。


(こっ、この状況、いかにすべきか……ッ!!?)


「呂蒙さん?ねー、どうしたの??早く来てください」

部屋の方からの声がした。

(なっ、なんと……積極的な……)

思いもかけぬ誘いにぼたぼたと流れる血を必死に押さえつつ、ぐるぐると考えをめぐらせる。


がここへ来てから数ヶ月が経つ。
最初、が空から落ちてきた時はどこぞの間者ではと疑いのまなざしを持ったが、彼女はいつでも明るく優しくこちらに接してきた。
今やはすっかり屋敷になじみ、家のことをいろいろと手伝ってくれている。

天上人ということもあってか、こちらの習慣に戸惑いを見せることも少なくなかったが、それでもはいつも笑顔をふりまき、周りを和ませた。


そしていつの間にか、この屋敷になくてはならない存在になっていた。

同時に、呂蒙にとっても。


(だ、だが急にいったいどうしたというのだ…?)

お互い、ごくごく自然に暮らしているため、男と女というよりは、家族に近い状態なのだ。好きだとか、そう言う気持ちを互いに伝えたわけでもない。表立ってそれを口にしたことはない。

……少なくとも自分はを好いているが……。


(し、しかし据え膳食わねば男の恥というし……うぅ……いや、だがしかし〜〜〜……)


「も〜〜!!呂蒙さんてば!!」


「のわぁぁああぁっっ!!!呂子明、未だ心の準備がぁぁっ!!」


しびれを切らしたのか、が呂蒙の所へ歩いてきた。無理矢理腕を引っ張ると問答無用で呂蒙を部屋へと連れて行く。





部屋に入るとは楽しそうに手招きして呂蒙を呼んだ。


「さっ、座って座って」



「……………ゑ???」

「呂蒙さん、いつまでたっても来ないんだもん。お料理、冷めちゃうから早く来て欲しかったのに」

「?????」

の前に料理が二人分づつ、何種類か並べられていた。呂蒙はわけがわからぬまま、おとなしくの向かい側に座る。は小さな取り皿と箸を差し出し、にこっと笑った。

「そうだ、さっき呂蒙さんが出て行っちゃったから言いそびれちゃったんですけど、さっき寝たくないって言ったのにはわけがあって」

「………???」

いまいち事態の飲みこめていない呂蒙。


「あのね、明日から新しい年になるでしょ?だから、明日…新しい年の一番最初の日に昇ってくるお日様を見たいなぁ〜と思って。初日の出って言ったらいいのかな。それでね、今晩からずうっと起きて、明日の日の出を待とうかなって。でも、私一人じゃ多分寝ちゃうし、早起きもいざって時に寝坊しちゃったりするかもしれないから、呂蒙さんと一緒にいてもらいたくって」


楽しそうに説明するを、ぽかんと口を開けたまま見る呂蒙。

「…それで…『今晩眠らない』…と言ったのか…。…そういう意味か …俺と寝るんじゃないのか

ぼそぼそと喋った後半部分はには聞こえていない。

「そうなんです。お夜食作ったりして、いろいろ準備もしたんですけど…って、あ、あれ?なんでがっくりしてるんですか?」

見ると呂蒙は壁の方を向き、背中を丸めて座っている。

「や、やっぱりダメですか?早く寝ないとダメ??」

呂蒙が怒っていると思ったらしいが、おそるおそる呂蒙の様子をうかがう。

「いや………いい……」
「…そういえばなんで鼻血出してたんですか?鼻のとこ、跡がついてる」
「……気にするな……とりあえず…粥でもくれ」






それから。


の作った料理は好評で、あっという間に平らげられた。
先ほどの早合点はともかく、職務のことで頭がいっぱいだった呂蒙には久々の団らんの時だった。


「ん〜……」

眠いのか、ぽすっ、とが力なく寄りかかってきた。

呂蒙は極力の負担を減らそうとを膝に乗せ、自分に体重をあずけさせる。

あらかた料理も片付き、二人で夜通しとりとめのない話をしていたのだが、もともといつも早く寝ていたには夜更かしは難しかったらしい。

時折呼吸が寝息のようなものに変わる。しばらくすると意識が戻ってくるのかが目をごしごしこすったり、眠そうにあくびをしたりする。寝たり起きたり……それを何度か繰り返している状態だ。


、もう少し頑張れ……だいぶ外が白んできた…」

頬をちょんちょんと触ってみたが、の反応はあまりない。また、眠りの世界へと足を踏み入れているらしかった。

「うーー―ん……」

「仕方のない奴だな……俺は起きているから、少し眠っていなさい。無理はしなくていい、後でちゃんと起こすから…」

「……んん…そうする…」

呂蒙の言葉に安心したのか、急速に眠りに落ちていく


「…本当に………困った奴だ…」

苦笑した呂蒙が、瞼にそっと口付けを落とした。












…………」


しばらくしては風の音と呂蒙の声に起こされた。


「ん…ん〜〜〜〜…」

「起きたか?」


「うー……起きた…だって風の音…。それになんか顔にちくちくあたるんだもん…呂蒙さんの髭みたいな…って、あ!?私…」

気がつけばは呂蒙に抱きかかえられていた。呂蒙はを抱えて外に出てきているのだ。


「あ、呂蒙さん、お日様は??」


「…大丈夫だ。少し早めに出てきたから…ほら、見ろ」


呂蒙が遠くを見やった。彼の視線の向こうにはなだらかな山々が見える。そこから橙色の光が少しづつ洩れ、次第に呂蒙との顔を照らした。

待ちわびていた太陽が、ようやくその姿を現したのだ。

「ぁ……きれい……見て!すごくきれい……!!」

が感嘆の声をあげる。子供のように朝日を指差してはしゃぐ。

「ああ…本当だ。……良かったな、

「うん」

まぶしい光は暖かく、館を、達を包み込んでいく。光が全てを洗い、浄化していくような、そんな光景だった。しばらくの間、じっと太陽の昇っていく様を二人で眺める。

「呂蒙さん、ありがとう」

そっと呂蒙に顔を近づける。


「ん……??あ、そういえばこの感じ」

「どうした?」

「さっきちくちくしたのと同じ。呂蒙さん、私が今さっき寝てた時したでしょ。……接吻」

「…さあ…な」

「正直に言ってください!」

「……十回ぐらいしたかもな」

「ええぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?も〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

呂蒙の胸板をぱしぱし叩く

「怒ったか?」

「もう。…当たり前です」

ぶう、と思いっきり顔をしかめてみせる

「……私が起きてる時にしてほしいのに」

言い終わらぬうちに、軽くついばむような接吻をした。

………」

呂蒙がに目を向けると、彼女ははにかんで笑った。まぶしい光がの笑顔を輝かせている、そんな気がした。

「では、そうしよう…」


穏やかに呂蒙が笑い、そっと目を閉じた。 やわらかい感触と熱が、ためらいがちにの顔におりてきた。











<モユ様のコメント>

呂蒙夢。

……ラブコメ……カ…?(なんで魏延)
ラブ度高めということで頑張ってみたのですがいかがでしたでしょうか…?


*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*/*


モユ様のサイト 『空中洋裁店・紬や』 にてカウント3333をゲット♪にてリクエストさせて戴きました!

りょ・呂蒙さぁぁぁああん!! ラ     ヴッ!!q(≧へ≦*)(*≧∇≦)p

「いかがだったでしょうか…?」って…もう!もおぉぉおうvvv素敵でございますv
モユ様の書かれる(&描かれる)呂蒙さんはオトナなのに可愛いvv
そんなアナタに鼻血ですワ。
読むにつれ顔がニヤケて止まりませんでした…あは〜(〃▽〃)

昨日までと同じ場所なのに吸い込む空気や目に映る景色…きっと違って感じられるでしょうね?
そして隣に一緒に居る、その人の体温を感じつつ…
こんな風に"新しい年"を迎えられたら幸せですよね〜?(*´ー`*)
呂蒙さんの腕の中はそりゃぁぁぁあ〜暖かいに違いない!ふふふv

…ちくちく…嗚呼ちくちく…んふ・んふふふふふvv…ふはははははははははは!!!←アブナイ

モユ様'S 呂蒙さんに出会って「呂蒙さんスキー度」が大幅UPしたワタシです。

素敵な作品を本当にありがとうございました!多謝!