+++ 姫 林 檎 +++



あの甄姫が
「生き返りますわね・・・」
「気持ち良いですね」
異世界から来た娘と木に登り、頭に葉っぱをつけて笑っている姿など
誰が予想出来ただろうか。
「・・・孟徳、止めんのか」
「うーむ・・・」
勿論、それは乱世の奸雄も例外ではなく

「馬鹿めが・・・」
司馬家のエリートも例外ではなく

「生足ですか・・・」
「孔明様?如何なさいました?」
「いえ私は何も・・・」
「・・・姫がもう一人増えてしまわれたかのようだな」
「声が大きいですよ呂蒙殿」
そして当然、何処ぞの軍師夫妻も火計好きの軍師達も例外ではなく

「もし元の世界に戻れる事になったら一緒に帰りませんか?」
「是非お願い致しますわ」
余りにも軽いその口約束と

「言わせておいて良いのか孟徳」
「ならん!!わしも一緒に・・・!」
「阿呆」
軽さでは負けていない曹操が今日も夏侯惇を疲労させている。

「甄姫お姉さんだったらモデルでも女優でも大成功しますね」
「もでる・・・ですの?」
「一攫千金でがっぽがぽです!」
「お前もお前だ」
顔を顰めて上を見上げた夏侯惇は

「・・・・・・すまん」
慌ててから顔を背け

「卑怯だぜ惇兄!!!」
「抜け駆けとは夏侯惇殿らしくありませぬぞ!」
「夏侯惇よ・・・して、何色であっごふっ
「いい歳をして何ですか!!あなた方は全く・・・進歩の無い!」
男子中学生のような千里行髭軍団+夏侯淵、及び
加わり損ねた残りの武将達を睨みながら、月英は関羽を氷の柱に変えた。

「見える物を見ようとして何が悪い」
開き直った曹操は
「哀れな程意地汚い親子ですわね」
嫁の反撃の一言を食らう事になる。

「意地汚い親子とまで・・・」
黄昏る曹操に僅かな同情の目が向けられたが
「仕方が無いだろう。 事実だ」
夏侯惇の台詞も尤もであり

「そろそろ下りますか?」
その間に大きな伸びをして甄姫に向き直った
「そうですわね」
言葉とは裏腹に、まだ名残惜しそうな彼女の頭についた葉っぱを取ろうとして

「あ。」
?!」
「落ちてるっぽいです」
足を滑らせて落下しながらへらへらと笑っている。

「笑ってる場合ですか!」
「これだけ居れば誰か拾ってくれるかなーと思ってるんですけど」
確かに、これだけ居れば大丈夫だとは思うが

「退けい!!」
「チッ・・・!」
「邪魔だぁぁああぁぁあ!!!」
「雑魚が!!」

「・・・当てになりませんわよ」
揉め始めた彼らには甄姫の不安も募り

「出来れば許チョさんなんかお願いしたいんですけど」
「おらかぁ〜?」
それでも呑気に指名すると、食べかけの肉を片手に首を傾げる許チョに

「止めとけ!食われるぞ!」
夏侯淵が叫ぶ。

次にガタイが良く、力が有る人物と言うと
「じゃあ典韋さんにしとく」
「ん?わしか?」
彼女は典韋に目を止めたが
「悪来だけは許さん!!」
「何でですか?」
「男の意地だ!!」
意味はさっぱりだが曹操の意地が掛かっているらしい以上
「じゃあ・・・」
も他の人物を選ばざるを得ないが

「まぁいいや、このまま落ちても」
不意に面倒になったらしく
「良い訳ねぇだろが!!」
「平気平気、骨折れるくらいの事でしょ」
「大事ですよ!!」
陸遜の声で改めて下を見た彼女は首を捻った。

「なんでまだ落ちてないんだろう」
どう考えてももう落ちていなければ可笑しいのだが
「ぬぅぅぅぅぅ〜〜〜〜!!」
「ちょ、張角?!」
「やりおるな・・・」
どうやら張角が全力での体を浮かせていたらしく

「張角さんもう良いですよ! 落ちても多分大した事ないし」
「な、ならぬぅ〜〜〜!」
汗をだらだらと流しながら首を振る彼は

「何で駄目なんですか?良いですよ、すぐ治る自信あるし」
「怪我でもさせたらどんな目に遭うか・・・!」
彼の頭上から凍て付くような鋭い目線を送る甄姫と
背後から湖底蒼月を突き付ける月英に恐れをなして目を瞑り

「歩けなかったら誰かにおんぶして貰うし」
「・・・そうか、それも悪くない」
限界が近い張角を気遣うに曹操がニヤ、と笑う。

「どうせなら関羽さんか呂布さんが良いなぁ」
「・・・そうか・・・それも悪くないかも知れんな・・・」
彼の覇道は一瞬で終わったものの
「今参りますわ」
甄姫はしゅた、と地上に飛び下り
「もう結構ですわ。 お退きなさい
張角を顎で使うと

「いらっしゃい」
ににっこりと笑顔を向け、両手を広げた。

「え、でも大丈夫ですか?」
「大丈夫ですわ」
「でもやっぱり何かあったら・・・」
顔色一つ変えない甄姫を前に困惑する彼女に

「彼女は笛一本で関羽殿や呂布殿と渡り合える御方ですよ、
月英が毅然と言い放つ。

「・・・笛一本・・・」
多かれ少なかれ傷ついた関羽をフォローするでもなく
「ぬぅ・・・っ」
翳していた手を張角が退けると
「本当に大丈夫ですか?っと」
あっさりを受け止めた甄姫は
「勿論です」
ちら、と他の面々に目を遣り

「使えない集団ですわね・・・あなた方にあって私に無い物は髭くらいですわ」
溜息と共に毒を吐いて
「あ、そうだ葉っぱ! ・・・あれ?」
は改めて彼女の髪についていた葉っぱを取ろうとしたのだが

「落ちたのではありませんか?」
「飛び下りましたもんね」
月英の言葉で納得したらしい彼女は
「言いたい放題だな・・・」
巡り巡って曹操の頭の上に乗っている葉っぱに気付く事は無かった。






未央様のサイト 「Bitter Chocolat」 にて
五萬打(!)記念フリー配布の夢小説を速攻奪取「その1」(笑)です(〃ω〃)

嗚呼もう…大好き!!o(≧▽≦)o
小気味よいテンポと言葉。そして何より無双キャラ達が可愛い!  張角さんまで愛しいワ(笑)

正に字の如く!
全ての無双キャラが"プリチーv"というより…「愛することが可」でしょう?ふふv